部屋が

だんだんと片付いてきて。
そしたら、広い部屋に、ひとりぽつんと自分だけがいるのに気がついた。

元々は、ルームシェアしようと思って借りた、広めの部屋だった。
もう、誰かが一緒に暮らすわけでもない。
いまここに、誰かが遊びに来てくれるわけでもない。

ねえ、聞いてよ。僕ね、お掃除手帳始めたんだよ。
お掃除した日はね、手帳にシールを貼るんだよ。
手帳をね、シールでいっぱいにするの……。
ほら、見て。お掃除が大の苦手な僕なのに、もう3つもシールが並んでついてるよ。
掃除は続けたらいいことがあるんだって。運気がよくなるって言ってた人もいたよ。信じてやってみるんだ。

なのにね、なのにね。
掃除したらいいことがあるはずなのに、逆に寂しく、悲しく、辛くなるのはどういうことだろう?

掃除を始めた頃は、汚れた部屋の真ん中で途方にくれていたのに。
今は妙に広くなった部屋の真ん中で、途方にくれている。

部屋の広さが、引越してきたときに似てる感じだからかな。
ここへ引っ越してきたときは、辛かったことが多すぎたから。
毎日泣いて過ごしてたっけ。
最近、ようやくあの日々が忘れられるようになってきたのになあ。
また、あの日のようになるんじゃないかという不安が芽生えて。
頑張っても、頑張っても、ちっとも不安が消えなくて。
片付き始めた部屋で、また泣き出した。
あの日みたくに、声を上げて。

……独りといえば。
僕の実家は、田舎なせいもあってものすごく広い家。
その昔、僕が習い事か何かで出かけてる間に家族がみんな出かけてしまい、帰ったときには僕が独りになっていたことがあった。
言伝もなんにもなく。広い家にたった独り。予想外の出来事。
おいていかれた。
元々家族とは距離感を感じていたけれど。
もう、みんな帰ってこないんじゃないだろうか。
そんな気さえした。
その時、僕は泣かなかった。
広い家の真ん中でぽつんと独りのまま、どうすればいいかわからないまま、ただ待っていた。
寂しいと感じても、幼く非力な僕は、それをどうすることもできなかった。
その時泣かなかった僕が、あの日泣いていたんだろうか。
そしていま、泣いているんだろうか。

寂しいから部屋を散らかすヒトがいると聞いたことがある。
なんか、わかる気がする。

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Posted by CINDY