刹那のご縁

ギリギリで乗った帰りの新幹線。
僕の指定席は13号車14番D席。通路側の席に座っていたら。
僕の隣りの窓側の席をとっていたらしいおじいさんがやってきた。
座れるように退こうとしたら
「どうぞ、詰めてください」
えっ。
そんなこと言われるとは思わなくてびっくり。
軽くお礼を言い、窓側の席に詰めた。
……僕はいつの間にか眠っていたらしい。
気がつくと窓にもたれかかっていた。
もう下車駅が近い。2時間くらい眠っていた計算になる。
きっとおじいさんが席を替わってくれたから、いっぱい眠れたんだ。
おじいさんありがとう。
降りるとき、さっきのおじいさんが隣りにいないのに気がついた。
そうか、同じ駅で降りるんだ。
降りたホームでおじいさんを見つけたので、改めてお礼を言った。
おじいさんのおかげで、熟睡できたから@@
そしたらそのまま世間話なんかもしちゃったり。
改札口へ降りる階段に差し掛かった頃、おじいさんが立ち止まった。
「悪いけど肩を貸してもらっていいですか。
 私は目が悪くてね、下り階段がどうも苦手なんですよ」
おじいさんの顔をよく見ると、相当度の強い眼鏡を掛けているのに気がついた。
快く引き受けると、おじいさんは僕の肩に手を置いた。
あれ? それだけでいいの??
「どうぞ、先に降りてくだされば、あなたのペースで降りていきますので」
なるほど。まったく見えないわけじゃないから、どこに段差があるかわかればいいんだね。
ふたりで階段をとことこ降りる。
「どうもありがとう」
おじいさんが無事に階段を降りられてよかった。
乗換改札を出た後、僕はホームへ降りるエスカレータの場所を間違えそうになった。
そしたら、おじいさんは僕の手を引いて、エスカレータのほうを指差した。
「ほら、こっち」
またしてもおじいさんありがとう。
ふたりは無事に乗換ホームまでたどり着いた。
そしておじいさんは下り電車に、僕は上り電車に。
「では、お元気で」
おじいさんの笑顔はとてもやさしかった。
ほんの少しの間に、刹那のご縁。
こんなこともあるんだなぁ。

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Posted by CINDY