花火

毎年恒例となっている木曾三川公園の花火を、今年は両親と在所のばあちゃんとで見に行った。
対岸で上がる花火を見ようと、午前0時を目前に多くの車が揖斐川の堤防に集まってくる。
父が打ち上げ場所の真ん前に車を横付けしてくれた。今年は特等席だ。
そして午前0時の強風の中、北斗七星をバックに最初の花火が上がった。
最初のうちは風に煽られてなかなか高く上がらなかったが、やがて風も弱まり、最高のコンディションとなった。
冬の花火は、綺麗だ。澄んだ夜空によく映える。
しかし、親友の一大事を聞いたばかりだった僕の心は、重いままだった。

この日は高校の時の同級生7人と初詣に行くはずだったのだが、いつまでたっても集合場所の連絡がない。
連絡ミスで、中止であることが僕まで伝わっていなかったらしい。
うーん、中途半端に時間が空いてしまった……。
あまりにも心配なので、空いた時間は親友と話すことにした。

男は、異様なまでに世間体を気にする。
親もまたしかりで、方々から借金してまで家のローンを返しているが、家を手放そうとしないそうだ。理由は、世間体が悪くなるから。
まさしく親厨。当然、その子も見事厨房である。
「このまま結婚するのなら、俺は誰にも迷惑かけないように友人、親、すべてから縁を切る」
縁を切ることで余計な心配をかけ、さらに迷惑になることがわからないのだろうか。
男の両親はかけおちした仲だと聞く。親は、子供に縁を切ることしか教えていなかったことになる。
いま非常勤講師なのだが、副業をやっている。しかしこれがまた金にならないらしい。しかし辞めることはできないのだという。
「今俺が会社を辞めたらクライアントや会社の同僚に迷惑がかかる」
会社に忠義を尽くすのはかまわない。が、残念ながら、会社はいざというときなにもしてくれないのだ。ましてやこの不況、自分の代わりはいくらでもいる。寝ぼけたことを言っているものだ。
「俺は今までお世話になった人達の恩返しとしてこの仕事で独立する」
しかし、会社の何たるかがわかっていない者が会社を興せるだろうか?
おまけにこの男は人を信用していない(一部を除く)。自分の部下を信用していない者に普通はついていこうとは思わないのではなかろうか。
よほど自分に自信があるらしい。まったくもって甘えた発言である。
どの発言も非常に聞き苦しい。15、6の未成年が言うならまだしも、いい年した大人が言うことではない。
それでいて自分は正しい、自分は正義だと思っているわけだから、手のつけようがない。周りの友人達も男の身勝手さに驚き呆れていると聞く。
どの道和解して結婚できたとしても長続きしないだろう。

彼女と話した後、僕は天使のもとへ向かった。
久々の天使。どことなくやつれた感があったが、それでも僕は天使に逢えてうれしかった。
天使に、いろいろな話をした。天使が、元気になるように。
遠くの魔法使いのもとに通っているという話も、聞いた。僕が以前お世話になった魔法使いだ。あの魔法使いは、信用できる。
そしてこの日は、天使の部屋に一泊した。小悪魔がやきもちをやいていたが、ふたりきりで過ごさせていただいた。

misc

Posted by CINDY