親と解りあえない

他人を悪く言って喜ぶ人間はどこにでもいる。
田舎は他人の噂ぐらいしか道楽がないから、どんな些細な噂でも瞬時に千里を巡る。
で、噂が広まるには必ず拡声器に相当する人物がいるわけで。実家から徒歩1分の距離にいる同級生の祖母がまさにそれだ。声もデカくて態度もデカイ。ついでに言うなら身体もデカイ。
最近では自分の孫が結婚して子供が出来たのをいいことに自慢と同時に他人を嘲笑うのだそうだ。まあ、その人は昔から自分の孫のことは棚に挙げて他人の子供等をこき下ろすので有名な人なんだが。イヤミたっぷりに言うので評判は今も昔も最悪だ。
その人とは別にもうひとり拡声器がいる。こちらは別の同級生の母親。この人は悪気はないらしいがつい言ってしまうタイプの人。この点を除けば非常にいい人なので、評判はそれほど悪くない。
その人が、最近僕のことについてあまり言わなくなったそうだ。
それは、ウチの母親が人生で躓きまくっている僕のことを悪く言うこともなく、いつも毅然とした態度で会話するかららしい。
自分の子供を悪く言われたときに恥じたり言い訳したり僻んだり言い返したりなどすると、後々まで言われることになる。でも、それなりの対応さえすれば、言われても最初のうちだけでそのうち何も言われなくなるとのこと。
しかし、僕にはそんなことはできない。器も狭いしね。
ウチの母親は、自分が大事だから、自分がいやな目にあいたくないから他人にも同じことはしないのだそうだ。
僕は昔から自分が嫌いで、自分はどうでもいいと思っているところがある。そのため、人付き合いがヘタなのだと親は言うのである。
確かにヘタではあるのだが、にしてもそりゃないだろう。
しかし親は言う。
「自分を大事に出来ない人が他人を大事にできるわけがない。
 アンタはそんなだからなんのためらいも無く他人との縁を切ることができるんだ。
 アンタの考え方は人間にあってはならない考え方だよ」
……僕が自分を嫌いな限りは、我を捨てない限り、僕は幸せになれませんか。
僕が好きでしていることは、みんな不幸に繋がりますか。
僕が化粧をしないのも、おしゃれをしないのも、そんなに異常ですか。普通じゃありませんか。
そもそも、普通ってなんですか。
みんなと同じでなければ、僕は精神病院に入院しなければなりませんか。
人間、各々が見えている世界は限りなく狭い。互いに狭い視界の中で、狭い思想を持つ。そしてその差が大きいと、どうにも理解しがたい存在となる。
今も昔も、親にとって僕は理解しがたい存在で、僕から見ればその逆だ。
僕と親とがわかりあえる日は、くるのだろうか。

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Posted by CINDY