第一期ネット婚活時代
休止くん。
登録したばかりでたくさんのメールのやりとりがなされる中、珍しく音楽の趣味で話題が一致する人が。
僕の音楽の趣味の偏り具合はなかなかひどいんだけど、またこれがピンポイントにRAGEというキーワードで話が進むかなり珍しいケース。
条件的にも申し分のない方だったので何度かメールをやり取りしていたある日、突然、退会しますメールが。
ほへ？ いい人見つかったんかな？と思ってたら……
「並行してメールしてた本命さんにお断りされて、婚活続ける自信がなくなりました……」
はあ。その程度で心が折れてたら結婚できんよね。
てか、退会がどうこう以前に拍子抜けした。
僕は、いままでのメールに対するお礼に添えて、苦しい時はひと休みして、また再開すればいいんじゃない？とだけ、返しておいた。
あれからだいぶ経つけど、退会してないね。
それどころかすぐに活動再開してるみたいだしね。
安易に休止や退会という言葉は出さない方がいい。
情けをかけてもらうための口上に見えるので、実のところ印象が悪い。
借金くん。
バツありというのはプロフに書かなくてはならない。ここを詐称するとろくなことがない。
というわけでお互いバツありということがわかった上で割と楽しくメールしてたのだけれど、いざ顔合わせという段階で借金のカミングアウト。
僕は、借金については、その経緯によっては仕方ないかなと思う方ではあるのよ。
親が自営なんで。事業やってると、借金と縁を切るのはなかなか難しいからね。
でもこいつは借金の内容がひどかった。
前妻との手切れ金。
返済の目処がついているのか問いただしたが、うやむやな返事が返ってきた。
おい、まさかそれ、未来の嫁に払わせるつもりか？
さらにバツ2であることも判明。
これはさすがにあかんなと思ったんでお断りすることにした。
僕は割と正直に自分の現状を話しているからか、様々なカミングアウトがある。
かなり機微な個人情報だし、諸刃の剣ではあるんだけども。
メアドくん。
この人とも音楽の話題で盛り上がったな。
何回かメールやりとりしてたら、突然、婚活サイトのメールシステムじゃなくて直アドでメールしたいと言い出した。
しかしながら僕は携帯メールが苦手でほとんど使っていない。仕事上、まめに携帯見られないし。
webメールはスパム受け用だし、メインの連絡手段がSNSやSkype。でも、顔合わせたこともない人にそれを教える気はない。
なにより、直アドで話したい理由がひどい。
婚活サイトのメールは自動削除されて履歴が残せないかららしい。なんちゅう粘着質な。
いや、金かけて受信メールの全文転送機能使えばいいじゃん、あるんだし。送信メールは転送できないけどさ。
しかしそいつは安い料金プランを使っていて、その機能を設定できない。
これは……地雷のニオイがするぜ、姐さん。
まだお会いしてもないんで……と僕が直アド交換を渋ったら、なんと逆ギレした。えーめんどくさい´д` ;
多分なんだけど、直アド交換したら親密になった証！とか思ってるんじゃないだろうか。
だとしたら、それはそれでかなり残念な思考パターンだと思われる。
なにより、自己評価で自分は頭がいいとプロフに書くくらいなんで、かなりプライドが高いのだろう。
直アド交換断られたことで、エベレストのようなプライドが傷ついたんじゃないかな。
けどね、思い通りにならないと逆上して暴言吐くのは前の旦那と大差ないんで。
ばっさり断った。
ついでに言うなら、頭がいいなら工場勤務じゃなく、その頭脳を活かせる仕事に就きなよと思った。ゲフンゲフン。
交換日記くん。
割と面白い人でトークも軽快、でもなかなか話が進まない。
流れを変えるべく、少し真面目な話を切り出してみた。
すると彼は、実はそれほど結婚したいとは思ってないと言うじゃないか。
婚活頑張ったのは最初の一ヶ月だけ、あとは惰性。
毎日やりとりする女の子たちとのメールを交換日記のように楽しんでいるとのこと。
そして感触がよければ一度会ってみて、あわよくば付き合えれば、らしい。
結婚する気がないのに登録してるなんて。
しかしまあ、こうなるのもわからなくはなかった。
ネット婚活は本当に雑談ばかりで、話が前に進まない人が多いのだ。
そして彼はそこそこの年収もあり、一等地にマンションも持っていて、別に一人でも生きていけるだけの余裕がある。
日々のメールはあるし、実家に行けば姪っ子もいて、特段さみしくはないとのこと。
面白い人なんだけど、先の展望が見えない人に時間を割いてる余裕はないなと思っていたら、向こうからフェードアウトしていった。
まあよかったんだよ、これで。
浪費くん。
結構な年収がある面白エンジニアだったんだけど、数日間の雑談ののち、壮絶なカミングアウトきたー。
趣味にお金を使いすぎて、貯金が全然ないんだって！
ってか僕の３倍くらい年収あるやんね、貯金ないとかどんだけ使ったんだよー！
以前、婚約した人からはカードで買い物をガンガンするところを厳しく指摘され、この人が今後は改めると泣きついたけど金銭感覚はそう簡単に変わるものではない、と破談になったとのこと。
うん、すごく反省してるんだろうけど、引くわー。
僕もその点についてちょっとなーとコメントしたところ、以後のメールに反応しなくなった。
そしたら、他にいい人を見つけたようで、退会していた。
親の年金未払いくん。
メールが雑談ばかりでなかなか話が進まない人だった。
親御さんが相当に難しい人で、いままで家族に散々振り回されてきた人で、そのほか対人関係で過去にいろいろあったのもあり、他人との信頼関係を確信するのに臆病になっていて。
まあそういう人もいるよね。そういう意味では恋愛経験が彼よりはある僕がリードせにゃならんかったんだろうけどさ。
ホント疲れるほどものすごく時間がかかったけど、ようやく、結婚を前提にお付き合いを、という話になりかかった頃、「親が社宅を出る」「でも新居の家賃を払うのは自分らしい」とかわけのわからないことを言い出した。
相手は親が勤める会社の社宅に住んでいるのだとか。それって、親の退職と同時に住居を退去状態になってるってことだよね、それはわかる。
子供が結婚して家を出ようとしているのに、親が新居の家賃を出して、と支援を要求するのはどうしてなんだろう。
いったい、この人はいつまでご家族の面倒を見なくてはいけないのかなぁ。
親御さんにだって年金とかあるんじゃないの？
それなのに最初から子供のお金をアテにしてるってどういうことなの？？？
年金などの収入と、家賃などの支出をきちんと計算した上で、新居を決めているのだろうか。
身の丈を超える物件とか、言い出してないだろうか。
すると、相手が「親の年金があと２年後にもらえる」とかよくわからないことを言っている。
相手は僕より５つも年上、親御さんが僕の親より若いとかよほどのことがない限りはありえない。
ちょっと確認してもらうことにした。
ところが。
調べたら、親の年金が未納になっていて、全然出ないのだとか。えっ、どうして？ 親御さんは会社にお勤めしていたんでしょう？
は？ 母親のねんきん特別便が届いていない？ 自分にねんきん特別便が届いたとき、親の年金がどうなってるか気にしなかったの？
親の老後は、自分の人生に間違いなく影響してくる。そういう意味では、ひとつのリスク。
いくら嫌いでも、自分に影響のあることには警戒をしておくってのが一番。親に老後の準備ができてなかったら誰が負担するの？！って世界になるもの。
なにもしなければ、全部自分の身に降りかかってくる。防御策とってなかったんだったら、至極当然な話。
本気で調査が必要と判断した僕は、すぐに区役所へ行って、課税証明書か所得証明書を取れるだけ取ってくるように伝えた。
同時に、税務署に納税証明書とか、年金事務所に年金の状況の調査依頼とか。
そしたら、出てくる出てくる。
彼の母親が、年金３号になってないとか。今まで保険は、国民健康保険だったとか。源泉徴収票どころか給与明細ももらったことがないとか。
うん、つまり、会社が着服してるようですなー（棒読み
それなのに相手は、家族について文句をウダウダ言ってるだけ。
なんしか、父親にこんなハードなケースを自分で始末つけろというのは酷でしょ～……。
息子が動いてやらないと、親が嫌いだからって放置なんかしたら、最終的に困るのは放置した息子側だよ。
自分が動かないで文句言ってるだけでは結局自分が損するの。
年金のことで頭がいっぱいだろうから、直近の問題である住まいのことを問いただすと、なにやら家賃相場が現実的ではないため家賃負担の話が再燃してるとのこと。
なぜ今の住まいの近くにこだわるのか訊いたら、母親が今のパート先を辞めたくないと言ってるのだとか。
人生の危機に、なにを寝言いってるのか。申し訳ないけど、僕には寝言にしか聞こえない。
最初から相手が頭数に入っているのがすごい。
相手を頭数に入れている理由ってのは、実家を出ないってのが大前提ってことでしょ？
同居は可能性低いって言ってたのに。全然話が違うじゃん。
今の収入で暮らすなら家賃がいくら以下じゃないと無理なのよってのははっきり数値に出して示さないと、相手はいつまでたっても家族の面倒を見続けなくてはならない、つまり相手は実家を出られない。
年金受けられるようになったとしても、結局家族だけで生活が回らなければ、相手のところに生活支援の話が出てきてしまう。
婚活してるから、嫁候補見つかったら家を出るよって話、相手がそう考えているだけで、前々から家族にしてなかったんじゃないの、これ。思ってるだけじゃ意味ないじゃん。
前々からもう家族とは関わりあいたくないと思っていたのであれば、家出るからもう支援できないよって意思表示をはじめとする防波堤を前々から築いておくべきだったんだよ。そうじゃなきゃ、家賃頭割りなんて話出てこないし。
住居の退去期限を聞いたら、５月だという認識、って。
確約じゃなくて、認識？ それ、認識違いで追い出されたらどうするの？
てかさ、こんなメチャクチャな状態で、結婚とか無理だよね。
……結局、もう親の会社に対する訴訟やらなにやらで、僕のことを気遣ってる場合じゃない、見限ってくれてかまわない、だそうな。
僕から別れの言葉を言わせようとするあたりが、もうダメだこれは、みたいな。
彼とはこれさえなければなと思った時期はあったけど、今思うとやっぱりいろいろダメな人なんで、破談でよかったと思う。