「おかん」は辛いんだ
■生後４か月、うつぶせで窒息死か…母親が５時間外出
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20060817i105.htm
このニュースに関する日記は大半が母親を非難する内容だった。
確かに５時間は長すぎる。
しかし。
ある人の日記と、そこへ連なるコメントを読んで、僕も複雑な気持ちになった。
『このニュースを見て「なんだこのバカ親」「親の資格なし」
とか今年３月に子どもを産むまでの私なら、絶対言ってた・・・。
でも、今同じ４ヶ月の子を持つ母親としてすごく複雑な気持ちでこのニュースを見てます・・・。』
その日記はこんなくだりから始まっていた。
ウチは、曽祖父・祖父・祖母・父・祖父の弟が棲む家へ母が嫁いできた。
その後初孫である僕が生まれたけれど、誰も母を手伝わなかったと聞いている……。
ウチは祖母が仕事で家を空け、家事を全くやらないという、あの田舎では相当奇特と分類される家庭環境で父と叔母が育っている。
そんな親の元、父と叔母はほぼ放置の環境で育った。
「私たちは親に育ててもらったとは感じていない。
自分で生きてきたと思っている」
という叔母の言葉が環境の異様さを物語っている。
祖父も祖母もふたりのことはまず放置で、結婚していない祖父の弟と父が一緒に遊ぶことがあった程度だという。
父親が弟を連れて遊びに行くことはあっても家のことをなにもしないのは、おそらくここからきているのだろう。
父がそんな調子で、祖母は相変わらず家を空け、祖父は畑仕事を少しやったかと思うとあとはテレビを見ながらずっと何かを食べているだけ。
祖父の弟は生涯独り身で会社に勤めていたから協力がないのは仕方がないとしよう。
結局、85を超えた曽祖父がたまに僕の相手をする以外、誰も何も母親に協力しなかったことになる。
たったひとりで、大人６人分の食事から田舎のだだっ広い家のすべての部屋を掃除、全員分の洗濯、そして僕の世話。
みんながめいめい自分勝手に行動し、誰も母を気遣うことはない。
母はかなり辛かったと思う。
その後弟が生まれ、曽祖父が亡くなり、父が独立し、直後に入院もしと、母はどんどん多忙さを増し。
そう思うと、比較的聞き分けのよかった僕が放置されたのも、母が実家に戻ったきり帰らない日々が度々あったのも、仕方の無いことだったのかもしれない。
が、僕がバツイチのオトナコドモに、弟もお世辞にもいい子とは言い難いちょいダメ男に育ち、母親は常々「子育て失敗したなぁ」と言う。
ついでに飼い猫までしつけがなっていないので、猫すらまともに育てられないなぁとも。
『うちのだんなさんは、お風呂に入れてくれたり遊んでくれたり、育児にわりと協力的だけど、夜、ひとりでゲームセンターに遊びに行く。
ひとりだけずるい・・・と言うと、一緒に行ったらいいやんと言うけど、たばこの煙いっぱいの空気の悪い空間にののを連れて行く気もせず、結局行ってもののが一緒だと大変なのは変わりないし・・・
ゲームセンターに行くことが羨ましいんじゃなく妻でも母でもないひとりの時間を過ごせるだんなさんが羨ましかった・・・。 』
僕が生まれたとき、父親は麻雀してたんだってさ。
僕が女の子だったから、病院にも来なかったってさ。
僕が生まれたのは、真夜中だったのさ。
……日記の一文を読んで、そんな話を思い出した。
ここを読んでいる男性陣にも訊いてみたい。
結婚し、子供が出来た後、奥さんをどれだけ気遣える？
僕が読んだ日記にあったように、独りでゲーセン行ったりしやしないかい？
その日記に、こんなコメントをつけてる人がいた。
『ほんと、私も「バカ親」なんて 口が裂けても言えないです。
長男はほんと良く泣く子でした。神経質で気難しくホント手がかかることでした。下に置くと泣くので、一日中抱いていました。ホント気が狂いそうでした。
その上、ひどいアトピー性皮膚炎だったから、皮膚科に行ったとき、化粧をしている私を、看護師さんが
「お母さん、子供が苦しんでいるのに、自分だけ着飾る神経が知れない。服ももっと飾りのついてない木綿を着ないと。」
と怒られて、まだ２０代前半だったのにもかかわらず、ノーメークで過ごしたんですよ。
テレビで、出産後 旦那が浮気をするのは、奥さんが母親になって「女」をすてるからだと言うコメントを聞いて、好きで女をすててるんじゃない、と絶叫したこともありました。』
女性は、いくつになっても「女」として扱われたい。
愛する人に「おかん」と見られたくはないだろう。
なのに、奥さんをまるで自分の世話係のように扱う男性のなんと多いことか……。
僕の父も、別れた旦那もそうだった。
さらに母方の祖父は、浮気をして何年も家に戻らなかった。
ここを読んでいる男性陣も、今一度考えてみてほしい。
彼女がいるひとは彼女を、奥さんがいる人は奥さんを、そんな目で見てないか。そんな扱いをしていないか。
独り身のひとは、彼女にしたい女性と結婚したい女性を別々のものとして見ていないか。
理想の女性に「おかん」であってほしいと思っていないか。
シングルマザーの僕の友達は、いつも言う。
「男はアテにならない。
肝心なところでいつも逃げる」
……ごもっとも。
世にいい加減な男性が多過ぎて、どんどん猜疑心が強くなっていく僕がいる。