電話はふたたび鳴った。
『前回もたいしたことなかったから、今回もきっと……』
その期待は、大きく裏切られる結果となった。
“あ と 1 時 間 も な い”
計器に示された数値は、ゆっくりとゼロに近づいていく。
もう、それを助ける術(すべ)は、ない。
……生きている証さえも、数値で示される。
人間はやはり、限りなくデジタルな生き物なのだ。
そして、ついに計器は「0」を示した。
心臓マッサージをしても、やめたとたんに計器はまた0を示す。
“午 後 0 6 時 0 3 分 ”
いのちの炎は、燃え尽きた。
切なく、儚く、消えていった。
そのひとの名と人格に似合わぬ、力ない最期だった。

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Posted by CINDY