ここ２～３ヶ月の間で、４年もつきあいのある奴のことをどんどん忘れていってしまっている。
つい先週のことですら、まともに思い出せない。
思い出そうとすればするほど、どんどん忘れてしまう。
社会人になったとたんに学生時代に勉強してきたことを忘れてしまうのように、恐ろしいスピードで。
他の奴らと遊びにいったことはちゃんと覚えているのに、そいつのことだけ忘れていく。
まるで、意図的に思い出せなくしてしまっているかのように。
『コノママデハ、破壊レル。』……無意識のうちに、自衛心から。
自分の意思とは無関係なところで記憶がなくなっていく。
遠い。
毎日夢を見る僕がそいつの夢を見なくなってから、もう１年近く経つ。
僕はそんなにも前から、こんなにもさみしい思いをしていたのだろうか。
４年もの間に積み重ねられた記憶を、ほとんど思い出せなくなってしまうほど。
最近見るのは、９年前の夢だ。
９年前の夏、ちょうど今ごろ。たった半年の間に起きたことが、何度も夢に出る。
見る度に、美化されていく。
あの日のトラウマは、この歳になっても残っていた。
『さみしさ』を強く感じたことで、鮮烈に蘇る。
まるで尽きることを知らないように優しく大きく暖かな愛情で胸がいっぱいになるまで包まれて、さみしさを微塵も感じることのなかった時間を、それを失くした瞬間を。